講座コンセプト
AI研究開発、特に多くの技術進展をもたらしているディープラーニングにおいては、大量かつ高品質のデータをいかに収集・活用するかによって性能が左右されます。こうした中で、現実世界で収集可能な限られたデータだけでなく、現実を模した仮想世界(シミュレーション空間)において生成・蓄積したデータにディープラーニングを適用するアプローチが注目を集めています。実際の工場などをシミュレーション空間内に再構成することで、より短期間かつ効率的にデータを生成・取得しディープラーニングを行うことが可能となるなど、様々な産業で活躍するAIが開発されることが期待されています。
シミュレータの活用に関して、近年、ディープラーニングによってシミュレーション空間自体を構築する世界モデルに関する研究も大きく発展してきています。今後はさらに、世界モデルに基づいたロボティクスや AI による言葉の意味理解の研究など、 AI のポテンシャル拡大に資する分野も進展すると想定されます。DeepMindやGoogleBrainなども世界モデルの研究に注力しており、この技術発展による社会的なインパクトは大変大きなものになると予想します。
東京大学工学系研究科松尾研究室では、これまでこの世界モデルを中心に、強化学習、ロボティクス、深層生成モデル、NLP、マルチモーダル技術等の先端領域の研究を進めてまいりました。
今後世界モデルをはじめAIに関する基礎的な研究の社会実装をさらに加速するとともに、ディープラーニングの研究をリードする人材を輩出する趣旨にご賛同いただいた寄附企業によるご協力のもと、2021年度より「世界モデル・シミュレータ寄付講座」が開設されました。